ミュンヘン
現在も解決の糸口が見えないパレスチナ問題を1972年に実際に起こったミュンヘン・オリンピック事件を題材にして描いたスピルバーグによる社会派作品。
2時間半以上の長編かつこのような重たいテーマの作品を、“どうやって撮っているんだ”というようなカメラワークとテンポの良い展開で、あたかもスパイ・サスペンス映画を観ているかのように飽きさせず引き込んでいくあたりは流石。
主人公の孤独な心理や当時の社会情勢の描写も解りやすく、ラストでテロという報復のメカニズムが現在にもつながっていることを示唆しているあたりも隙のない演出だ。
どんなにテーマやメッセージ性があっても、やはり映画は面白くなければ観ている側はつらいだけだ。
今作品のように伝えたいことはしっかり伝えるが、あくまでエンターテイメントという絶妙なバランスで表現できるあたりにスピルバーグの凄味があると思う。
暗く重たい話だがこのような事件があったことを知っておくべきだと思うのと、映画としての娯楽性を無視していない部分が評価大で★★★★★。
164分/カラー/アメリカ/2005年
監督: スティーヴン・スピルバーグ
原作: 「標的(ターゲット)は11人 モサド暗殺チームの記録」ジョージ・ジョナス(新潮社)
脚本: トニー・クシュナー/エリック・ロス
音楽: ジョン・ウィリアムズ
出演: エリック・バナ/ダニエル・クレイグ/キアラン・ハインズ/マチュー・カソヴィッツ/ハンス・ジシュラー /ジェフリー・ラッシュ